よくある間違い: Sirの取り扱い

Ineffabilis!

20日ほど前の記事だが、UK Today by Internet Journey「ポール・マッカートニーの息子ジェームズ、"カジュアルな"散歩姿をスクープされる!」において、よくある間違いが見られる。

サー・ポール・マッカートニー«Sir Paul McCartney»の長男であるジェイムズ・マッカートニーが姉のメアリーと散歩しているところを写真に撮られたという、Daily Mailのスクープを元にした記事である。その中で以下のような記述がある。

ジェームズさんは2曲の歌を作曲、2001年にリリースされたマッカートニー卿のアルバム「Driving Rain」ではギターを弾くなどミュージシャンとしての経歴も持つ….

ここで気にするのはマッカートニー卿の部分である。記事の初めには元「ビートルズ」のメンバー、ポール・マッカートニー卿と書かれており、これは二回目の記述であるから略していることがわかる。しかしながら問題がある。

なにも、私がどちらかといえば’Sir’を「卿」と訳さず「サー」とそのまま書く人だからといって、そのことで「Internet Journeyの記事は間違っている!」と言っているわけではない。

これは日本語メディアでよく見られる間違いなのだが、’Sir’は’Surname’には付かずに’First name’に付く、と言うことを忘れてはならない。つまり、’Sir + First name + (Surname)’である。従って、上記の記事において「ポール・マッカートニー卿」を略するときは「ポール卿」としなければならないのだ。もし、「マッカートニー卿」と書いてしまうと、実際の身分以上の敬称で呼ばれることになり、かなりの嫌味や皮肉に聞こえる可能性もある。

ちなみに、ナイト爵(勲爵士、士爵という訳もある)を持つ人の夫人の称号に関しては、英国のメディアでも間違うことがある。夫人自身が何らかの称号を持っていない限り、’Lady + Surname’となる。もちろんこの’Surname’とは夫の’Surname’である。夫と妻では組み合わせるものが違うので注意。

即ちマッカートニ卿夫人は、レイディ・マッカートニー«Lady McCartney»となる。ちなみにこの言い方は現夫人を指すので、死別したリンダのことではなく、再婚相手のヘザーのことである。離別したり死別した元(前)夫人のことは、たとえばこの場合では、Linda, Lady McCartneyの様に言う。訳しにくい配列の英語だが、あえて訳せば、「元マッカートニ卿夫人リンダ」の様に意図的に状態を明示したように訳す方がよいと思われる。

リンク切れのため引用元のリンクをInternet Archiveのリンクへ差し替え(2009/02/09 0:52)

旧ブログ時代Writeback(s)

Trackback(s)

1: サウスアイランド公国ブログ自治領/大英勲章 (2004/09/15 11:36)
現在も爵位制度のある英国でも、新たな爵位の授与はほとんど行われない。その代わり、功績の顕著な人物に勲章を授与し、Sir(女性の場合Dame)の称号を許可する制度がある。その叙勲制度のひとつである大英勲章について説明する。
2: タクシーマニア taximaniac 的士熱狂男/ゲイマニア (2004/11/05 01:40)
エルトン・ジョン、10年以上交際の男と結婚。 お相手は、デヴィッド・ファニッシュ氏(40)。
文中にもありますように、エルトン卿ですよ。エルトン卿。それが、ゲイですか?すごかとこやねー。大英帝国ばってんは。そぎゃんことは、九州じゃ考えられんとで.

この記事の内容は公開当時の研究結果及び見解を伝えるものです。その後の法令情勢の変化や、見解の変更、学術的なコンセンサスのアップデートなどもありえますので、貴殿がアクセスされた時点での正確性などを保証するものではありません。

25/03/2021メディア, 称号, 英国, 過去ログ

Posted by dzlfox