第11代デヴォンシャー公爵の葬儀

Ineffabilis!

またもや少し前のUK Today by Internt Journeyの記事から。第11代デヴォンシャー公爵(ガーター騎士、枢密院議員、戦功十字章受勲者)«The 11th Duke of Devonshire, KG, PC, MC»が5月3日に薨去したことを受け、葬儀が同月10日に行われた。その葬儀場の教会へ向かって出棺される際に邸宅の沿道に使用人が並んで見送っている様子が述べられている。(Internet Journeyの方は写真が既に無くなっているので、BBCに残っている写真を参照されたし。)

その記事中に以下のような記述がある。

棺は公爵夫人と、11日に第12代デボンシャー公爵を世襲した、息子のハーティングトン卿(60)に伴われて教会に搬送されたという。

注目すべき点は二つ。まず継嗣の称号。ここでは領地名が「ハーティングトン」と記されているが、Hartingtonであるからおそらく「ハーティントン」の方がより正しいだろう。公爵の継嗣は社会的に、実際の「侯爵」に准ずる地位を持ち、父親に二番目の爵位を儀礼称号«courtesy title»として帯びることが認められている。公爵の中には二番目の爵位が伯爵以下だったりしてややこしい場合があるが、デヴォンシャー公爵の場合は幸いにして’The Marquess of Hartington’である。すなわち、正式な場や系図等々では’Marquess of Hartington’、より一般的には’Lord Hartington’となる。したがって日本語に訳せば「ハーティントン卿」となるのである。

ここで注意する点は儀礼称号として用いられる場合、'The’は付かない、ということ。たかが定冠詞の’The’という感じもするが、実はこの’The’は、貴族のもっとも公式な敬称を省略したものと考えられている。公式な敬称とは以下の通り:

  • The Most Noble – 公爵
  • The Most Honourable – 侯爵
  • The Right Honourable – 伯爵・子爵・男爵

これらが本来は爵位の前に付く。たとえばデヴォンシャー公爵の場合、’The Most Noble the Duke of Devonshire’となる。これは、実際に爵位をもっているからこそ付されるべきものであるから、実際には爵位をもっていない儀礼称号を称する人には用いられるべきではない。したがって、ハーティントン卿の場合は’The’が付かないのだ。

ただし、一部の機関で見解の相違がある。

なお、ハーティントン卿の長男、即ち11代公爵の嫡孫に当たる人物は「公爵の孫」という身分により、伯爵に准ずる地位を有しており、三番目の爵位をもって儀礼称号としている。即ち’Earl of Burlington’もしくは’Lord Burlington’と呼ばれる。

二つめは11日に第12代デボンシャー公爵を世襲という点。法的に言えば、ハーティントン卿は、父公爵が薨去した時点で襲爵している。では何故この記事では「11日に爵位を継承」となっているかいうと、「先代の葬儀が終わるまで、その継嗣はそれまでの儀礼称号で引き続き称される」という慣習によっているのだ。今回の場合は、葬儀が10日だったので、「11日に爵位を世襲」と書かれているのだろう。

とりあえずは、故人の冥福を祈りたい。

リンク切れのため引用元のリンクをInternet Archiveのリンクへ差し替え。引用元の記事にあった写真は既にみれないので、代わりにBBCに残っている写真へのリンクをはる。(2009/02/12 23:44)

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1: サウスアイランド公国ブログ自治領/英国貴族の称号・敬称2 (2004/09/15 11:37)
階級社会の英国。称号・敬称はまだまだあります。

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25/03/2021メディア, 称号, 英国, 過去ログ

Posted by dzlfox