英国女王の夫君について – 婿殿シリーズ Part II

Ineffabilis!

さて… 結論から申しますと、英国においては女性君主の夫の地位・称号に関しての統一的な法的な規定はありません。英和辞書に「女王の夫君」として’prince consort’と載っていることもあって、しばしば女王の夫君全てが’prince consort’であるような印象を受けますが、これは異なります。英国法では’Prince Consort’の称号を賜らない限り’Prince Consort’ではありません。英国史上、この号を受けたのはヴィクトリア女王の夫君であるPrince Albert of Saxe-Coburg-Gothaだけです。

ところで、英国史上女王(並びにそれに類する人)は何人かいますが、その婿殿たちはどのような称号だったのか、見ていくことにします。まず、リストアップして見ます。夫君は英国における称号で書きます。(敬称はここでは省略しています)

マティルダ (Matilda, Lady of the English; 'Empress Maud’)
アンジュー伯ジョフリー四世akaノルマンディー公ジェフリー五世(Geoffrey V, Duke of Normandy, Count d’Anjou)
ジェーン (Jane; 'Lady Jane Grey’)
ギルフォード・ダドリー卿 (Lord Guilford Dudley)
メアリ一世 (Mary I)
イングランド国王フィリップ(King Philip of England; スペイン国王フェリペ二世)
エリザベス一世 (Elizabeth I)
結婚せず
メアリ二世 (Mary II)
イングランド国王ウィリアム三世 (King William III of England)
アン (Anne)
カンバーランド公爵デンマーク王子ジョージ (Prince George of Denmark, Duke of Cumberland)
ヴィクトリア (Victoria)
王配公サクソ・コウバーグ・ゴータ公子アルバート (Prince Albert of Saxe-Coburg-Gotha, Prince Consort of Great Britain)
エリザベス二世 (Elizabeth II)
エディンバラ公爵フィリップ王子 (Prince Phillip, Duke of Edinburgh)

最初の二人は、公式には女王ではありませんし、モードに関して言えば実際に女王も名乗っていません。Lady of the English (England)はしばしば「イングランドの女主人」とかいう風に訳されますが、このLadyはLordの女性形で、要するに「イングランド(女)領主」という事です。当時は戴冠してナンボの時代なので、戴冠していないMathildaはLady of the Englishを宣しました。

とはいえ、ここで最初の二人をいきなり扱うのは、ちょっと面倒なので後回しにして、次回からメアリ一世から順に考察していきたいと思います。

スコットランド王国の女王も上記リストから省いています。これは別の王国なので事情も違うから、という理由もあるのですが、一緒にするとややこしいので…
いずれ、扱います。

この記事の内容は公開当時の研究結果及び見解を伝えるものです。その後の法令情勢の変化や、見解の変更、学術的なコンセンサスのアップデートなどもありえますので、貴殿がアクセスされた時点での正確性などを保証するものではありません。

22/09/2023称号, 英国, 過去ログ

Posted by dzlfox